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検視(変死)~取扱いが多くて大変だけど奥深い

警察の具体的な仕事

厳密に言うと捜査ではないのですが似たようなものなので捜査のカテゴリとして書きます。
ちなみに「検死」とは言いません。
我々は「変死」と言っていました。「昨日は変死が3件あった」みたいな感じで。
ただこれも厳密には用法がおかしいのではありますが。

このように検視は法的根拠とかがけっこうややこしいので,この記事ではかなりザックリとした説明にします。
詳しいことが知りたい人がもしいたら,個別にメッセージなどください。いないと思うけど。

検視とは(対象となる死体)

自然死した以外の死体について,犯罪性があるかどうかを調べることです。
自然死とは医師に看取られた死体と思ってもらっていいかと思います。

ですからそれ以外は基本的に検視の対象になります。
つまり病院で死ぬ以外はほぼ検視対象と思ってもらってよいです。

ですから件数はかなり多いです。
大きな署だと1日1~2体ある感じでしょうか。多いと3~4体とか。

誰が担当?

本部の捜査一課に検視官というエラい人いてその人が責任者です。
変死は24時間あるので,三交替勤務です。

署の担当は刑事で,初捜係がいるところは初捜,そうじゃないところは強行犯係と鑑識係が主に担当していました。
当直時間帯は刑事当直が担当します。

具体的に何をするか

現場

死者が死んだ現場を調べます。
令状はありませんが,家の中も調べます。
冒頭で厳密な意味では捜査ではないと言いましたが,家の中に立ち入ったり調べたりできるのもこの時点では捜査じゃないためです。

貴重品

泥棒などが殺したのではないかという可能性を打ち消すために貴重品がなくなっていないか確認します。
併せて現場に争った形跡がないかとか,屋内なら施錠はどうだったかとか。

余談ですがこうやって貴重品を確認しているとたまに札束がゴロゴロ出てくることがあってたまげることがあります。
一方で小銭しかないこともしばしばあります。

死亡直前の状況

死ぬ前にどんな行動を取っていたか調べて死因の推定につなげます。
カレンダーとか電話の通話歴,食事の状況とか。
ゴミ箱をあさったりもよくあります。
ゴミ箱あさりは汚いし臭いですが証拠の宝庫なので欠かせません。

これもやはり誰かともめごとを起こして殺されたんではないかとか,毒を盛られて殺されたんじゃないかといった可能性を吟味するためです。

病歴

死ぬような病気を患っていたのかどうかを調べます。
併せてどんな薬を飲んでいたかとか。

事情聴取

発見者とか家族とか最後に会った人などから死者についての話を聞きます。
上記の現場で調べるようなことを聞いて供述調書にします。

死体

死体観察

死体の外表を調べます。
体におかしなケガとか骨折がないかとか,首を絞められたこん跡がないかとかが主。

普通の家でそれほど不自然ではない死に方をした場合はその場で死体を調べることが多いですが,死に方が不自然だったりすると署に持って帰ってよく調べます。
また引き取り手がなさそうな死体や現場がゴミ屋敷などで検視できそうにない場合も署へ持って帰ります。

腐乱死体や列車に轢かれるなどしてグチャグチャになった死体は検視もなかなか大変です。

参考記事

検案

医師にも死体を調べてもらいます。検案(けんあん)といいます。
死亡診断書に代わるものなのでこれがないと火葬できません。

夜間や休日などは検案にきてくれる医師がいなくて苦労することもよくあります。
また検案にきた医師に死体から尿とか血液を採ってもらって薬物などの検査を行うこともあります。

死体現象

死に方や時間経過で死体にはさまざまな現象が現れます。
よく知られているもので言えば,硬直とか死斑とか。
硬直や死斑の状況で,ある程度経過時間が推定できたりします。

こういう死体現象はたくさんあって,因果関係などを勉強するとなかなか奥深くて面白かったです。
ですから私は変死がどちらかというと好きでした。
好きというと変ですが非常に興味深いと思っていました。
死体は嘘をつかないと言いますがあれは本当で,おや?と思うような死体現象があると何かしらそれが起こりうる理由が存在します。

調べた結果

以上のことを検視官に報告してどうするのかを決めます。

犯罪性がない

死体を遺族に返します。
そして調べた経緯を書類にして終わりです。
行政検視として処理します。
事案を認知してから書類が完成するまでだいたい4時間くらいでしょうか。

犯罪性がある

死体を解剖してより詳しく調べます。
鑑定処分許可状という令状を取らないといけないですし,殺人の可能性があるとなると捜査項目が急増するので一気に大変になります。

微妙

犯罪性はなさそうだけど,現時点ではまだ断定に至らない,もうちょっとよく調べてみようっていうのがちょくちょくあってこれが本当の意味での変死体です。

代行検視という扱いになり,結果を検察庁へ送付(送致みたいなもの)しなくてはならなくなります。
捜査事項や書類も増えますし行政検視と比べると大変です。

私たちは略して「代行」と呼んでいました。
状況から代行にせざるを得ないものは仕方ないのですが,検視官がアレだったりしてよく分からない理由で代行にされるとテンションだだ下がりでした。

代行検視のときは解剖までには至らないこともよくあります。

その他

参考記事

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