警察は役所なので,基本的になんでも書類にします。
最近はさすがに電子化も進んできましたが,捜査書類は今のところ電子化とはほとんど無縁です。
書類作成はなかなか奥が深く,ポンコツが書類を書くと時間がかかるし内容が意味不明であったり,日本語すら成立していないことさえあります。
逆に優秀な人が書くと早いし内容にぜい肉がなくて締まっており,かつ必要な内容はきちんと盛り込んであるので読んでいてほれぼれします。
ポンコツを脱して,ある程度は書類が書けるようになっても,中途半端者の作る書類はやたらと長くて冗長なものが多いです。
私もシンプルな書類を作るように修行はしましたがなかなか・・・
警察っていろいろと職種があるので,「優秀な警察官」と一口にいってもさまざまな見方ができると思いますが,書類作成が早い,上手い警察官は,間違いなく優秀な警察官のうちの一つです。
よく作る捜査書類
被害届と実況見分調書
警察官になって一番最初に扱う捜査書類です。
何らかの被害に遭って警察に届け出ると,被害届というのを受理します。
定型的なものは交番で受理することが多いです。
余談ですが,私のいた県ではこういった定型的な被害届を受けた場合,被害届と実況見分調書という書類をセットにして内勤に引き継ぐのですが,これは県によってマチマチらしいです。
ある県は侵入窃盗の実況見分は刑事がやるって言ってましたし,簡易な被害届しか取らないところもあるそう。
実況見分というのは,例えば車が盗まれましたという被害の場合,盗まれた場所はどんなところか,周囲にはどんなものがあるか,その車が置かれていた位置はどこか,犯人のこん跡や証拠品はないか等といったことを調べることです。
メジャーで現場を測ったり,写真撮ったり鑑識作業をしたりするあれです。
これをきちんとやるのって意外と難しく,さらにその内容を文字や図で表現するのがまた難しいので,初心者警察官にとって最初の難関と言えます。
私も鑑識専務で本格的な実況見分をするまではずっと苦手意識がありました。
捜査状況報告書
略して「捜報(そうほう)」です。
全国統一の書式がないので,各県で「捜査報告書」だったり微妙に呼び名が違ったりしますが中身は捜査したことについて報告なのでそれほど変わりません。
人定特定とか飲酒検知とかよくある捜査については定型化してほぼコピペに近いですが,そうじゃないものももちろん多く,そういう捜報で捜査員の個性や工夫が光ります。
供述調書
被疑者や参考人を取り調べた内容をまとめて書類にしたのが供述調書です。
取り調べた内容を取調官がまとめるので作文と言えばそのとおりですが,話をまとめないと何が言いたいのか訳が分からなくなるので仕方ないです。
つまり供述調書を作る人(取調官)には,供述者(被疑者,参考人)から要点を絞って話を聞く能力や聞いた内容をまとめる能力,それを簡潔に文章で表現する能力などが必要なのでこれまた難しいです。
さらにいえば要点を絞って聞くためには,犯罪の構成要件とか捜査上の要点なんかもきちんと把握しておかないといけないので総合力が問われます。
無論今言ったのは相手が素直に話してくれているという前提ですから,否認している場合はさらに別の技術が必要です。
参考記事
写真
百聞は一見にしかずというように,写真で見れば一発で分かることも多いので,とにかく写真を取ることが多いです
撮った写真は実況見分調書や捜査状況報告書,写真撮影報告書などの書類にします。
写真もやはりその事案のポイントなどを考えてながら撮らないといけませんし,やり直しがきかないことも多いので,現場ではなかなか悩みます。
さっき私は,実況見分についてはある程度克服できたと書きましたが,写真は最後まで「上手くいった」と思うことはあまりなく,反省することの方が多かったです。
しかし写真は撮ってさえしまえば,書類はチョロッと説明を書いて貼るだけなので楽です。
でもちょっと事件が大きくなるとホッチキスで止まらない厚さになるどころか,ドッチファイル丸ごと1冊が実況見分調書というのもあり,パノラマ写真の切り貼りだけでも発狂しそうになります。
あとこういうパノラマを多用した書類は控えや謄本を作るのにコピーするのも大変です。
その他
以上,よく書く書類をあげましたが,もちろん他にもたくさんあります。
証拠品関係の書類や,照会関係の書類とか。
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