警察のけん銃
警察官になるとけん銃が貸与されます。
警察学校で初めて持ったときの重さや金属の冷たさは今でもよく覚えています。
警察官はどんな部門にいようと一人一丁けん銃を貸与されています。
それこそ絶対撃つことがないような署長とかまで。
やっぱり警察官の象徴なんでしょうね。
けん銃は回転式と自動式があり,自動式は持ったことがありませんのでよく知りません。
回転式もニューナンブとエアウェイト(S&W M37),サクラの3種類しか知らないです。
ニューナンブ
最初に持ったけん銃がこれでしたが,重たいしデカいです。
エアウェイトと比べるとよく当たると言われていましたがよくわかりません。
とりあえず引き金が重いのも嫌いでした。
重いしデカいのでけん銃をよく持ち歩く地域や刑事の人には貸与されず,あまり持ち歩かない人に貸与されてます。
エアウェイト
ニューナンブに比べると格段に軽いです。
私が使った限りでは命中精度もそんなに悪くないと思います。
引き金が軽い分ニューナンブよりよく当たっていました。
地域とか刑事ではこのけん銃を一番長く持っていました。
耐久性が悪くて撃ちすぎるとすぐ壊れるという話を聞きましたが本当なのだろうか?
そもそもほとんど撃たないですからねえ。
サクラ
エアウェイトの後継機らしいです。
見た目や重さなどはあまり違いがないように感じます。
この銃はあんまり撃ったことがないので,命中精度とかはよく分かりません。
ホルスター
制服だとホルスターも一緒に貸与されるのでそれを使うしかないのですが,私服の場合は自分でホルスターを買ったりもしていました。
貸与されるのはショルダータイプなのですが,肩が凝るので人気があまりありませんでした。
またこれをつけるとその上に何か羽織って隠さないといけないので夏場は暑いし。
そういうわけでウエストポーチタイプのホルスターが流行っていましたし私もそれが気に入っていいて自前でそういうホルスター買いました。
しかし公衆トイレなどに置き忘れる事案が頻発したので今は使ってないのではないでしょうか。
けん銃自体はひもでベルトと繋がってはいるのですが,トイレで大をするときはそれを外さないとできないですからね・・・
ですから最近は自分でカスタマイズするといっても肩が凝らないようなショルダーホルスターにするくらいです。
あと変わり種ではヒップホルスターを使う人も見たことがあります。
あれも意外とよさそうでした。
レッグホルスターはさすがに見たことがありません。
射撃技術
かなりレベルが低い
警察官はけん銃撃ったら百発百中ではなくて,実際は当たらない人の方が多いです。
射撃訓練で的の中に弾が入ってない人なんていくらでもいます。
だって普段訓練してないんですから当たるわけがない。
勤務中に常時けん銃を携行してる重点訓練者といわれる人でも年間15発程度しか撃たないんですよ。
そうじゃない人に至っては隔年。
そんなんで技量向上はおろか維持すらできるわけがないですよね。
しかも基本的に止まった的しか撃たないし。
そうかといって実弾を使わない空撃ち訓練(これでもやらないよりはかなりマシです)でもやってるのかと思えばそれすらやりません。
映像シミュレーションもありますが,これも一人一人がやれるようなものじゃなくて,何人かが代表でやってあとは見てるだけだし。
余談ですがこの映像シミュレーターってみんなの前で寸劇をやるというたいそう屈辱的なものなので,やり方を考えた方がいいと思います。個室作るとか。
警察官が実際にけん銃を撃つ想定のほとんどは,刃物持ったやつがこっちに突進してくる等,距離が近くてほぼ止まった的みたいなものですから,こういう訓練で十分なのかもしれませんが。
犬に弾を当てるのはすごいこと
以前犬を射殺するのに13発撃ったっていう事案がありましたが,私は13発かかろうがなんであろうが,人間よりも小さな「動く」的を撃ったという事実がすごいと思うのであります。

私がこの立場に立たされて当てられたかといえば全く自信がありません。
けん銃って思ったよりも繊細な道具で,けん銃を撃ったことのない一般人のイメージで引き金を引くと,まず「ガク引き」になって弾がとんでもない方向へ行きます。
これはけん銃を撃ったことのある人なら大きく首肯してもらえるのではないかと思います。
「闇夜に霜の降るように」引き金を引くのがとりあえずの当たるコツなのですが,そんなことを緊迫した現場でやっていたら撃つ前に刺されます。
ですから「急ぎつつ」「霜の降るように」引き金を引ければ当たるんですが,なかなかこれが難しいです。
私はそこそこ当たる方でしたが,けん銃って些細なメンタル面が左右することも多く,今ひとつ安定しませんでした。
「早撃ち」っていう止まった複数の的を一定時間内に撃つ種目があるんですが,一定時間内っていうのがけっこうプレッシャーになって当たったり当たらなかったり。
止まった的でもこんなですから,緊迫した現場で動く的に当てろと言っても当たる可能性は低いということですよね,残念ながら。
余談ですがけん銃がよく当たる人って変わり者が多かったです。
マイペースで動じない人がやっぱり当たるのかなあ。
手足をねらえとか無理
つまり仮に人に向けて撃った場合も,急所を外して撃つなんてことは無理です。
私は現職中,もし撃つような事態になった場合は,被疑者の体の真ん中を狙うつもりでいました。だってそれが一番当たる可能性が高いですからね。
教科書や頭の悪い四角四面な指導者は「足や手を狙え」と言っていましたが,真ん中ですら当たるかどうか危ういのにそんなんできるわけないですよね。
当たらなかったら刺されるのに。
現実的な指導者は狙う箇所について「訓練ではあれだけど,実際もし撃つ場面になったらゴニョゴニョ・・・ヘッドショットはすんな」とはっきりとは言いませんがまあそうしろとごまかしてました。そりゃそうなりますよね。
まとめ~もっと訓練した方がいいと思う
時代が変わってきて警察官が現場で撃つことも増えてきましたが,それでもまだ発砲というのは実感のわきにくいことです。
私も15年間在職した中で,指令を受けて現場に行く途中に「ひょっとしたらけん銃を使うようなことになるかもしれない」と思うような事案すらほとんどありませんでしたし,現場でけん銃をとりだしたこともありません。
今も今後も退職までけん銃を撃たない人の方が大多数でしょう。
そんな中で,全警察官が動く犬を一発で仕留められるようなレベルまで訓練するというのは,費用対効果の面で現実的ではないかもしれません。
しかしけん銃を使う事案は間違ったら自分や被害者が死にますからね。
少なくとも今よりはもうちょっと訓練すべきなのではないかと思うのであります。
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